マイナー思考
『あのひとたちの背中』の浦沢直樹のパートを読んで、
ふと、ふたつのことを思い出すことができた、
自分は、いつもマイナー(ブルーオーシャン)だったではないかと。
何をいまさら、メジャー(レッドオーシャン)に触れるのか。
マイナーで安心して集中してたら、
急にメジャーになって、
あたふたして撤収して次に移っていくパターンでやってきたではないか。
そして、
新しいプロジェクトを考えているとき、
次の1、2年でやることが急にパーっと拓(ひら)けて
全部見えたものだけ選んできたはずだ。
あとは、取りこぼさないように最後まで気をつけて最速で仕上げてきたのが、
学生とポスドクの時のプロジェクトだったではないか。
なにを今更、周りの動向を気にしてメジャー志向になる必要があるのだろうか。
浦沢 僕は絶対に最終回を考えてから話を始めますから。最終回のイメージに向かってるんですよ。全何巻のボリューム感で、こういう感じで終わる、というイメージで話を進めている。
重松 レッドゾーンの話に戻ると、描きはじめる前に作品の頂点が見えてしまうようなものですよね。それって、逆にキツくないですか?
浦沢 一番最初が一番面白いんです。針が振り切れた瞬間、金字塔のようなものが立ってる。あとは自分がこれを崩さずに最後まで届けられるかどうか。黄金の水を手ですくって満杯にしているんです。指の隙間から水がポタポタ垂れてるんだけど、なんとかそれを最後までこぼさずに運んでいきたくて。
重松 ただ、最初の時点ではどうなるかわからないまま始めて、育っていく物語はありませんか?あるいは外から持ち込まれた話に乗ってみたら、意外にどんどん面白くなっていった、とか。
浦沢 ......最初に針が振り切れていないと、やっぱり始めないかな。