『あきらめない心』『ぼくはこう生きている 君はどうか』

『あきらめない心 心臓外科医は命をつなぐ』(天野篤)

 

自分たちの薬剤開発とは違うようで

同じ目標を目指す外科の人たちの心情がよくわかる名著。

内科、外科、看護の連携が如何に大事かが分かる一方、

現実にはとても難しいことなのだと思う。

 

 

再読

『ぼくはこう生きている 君はどうか』(鶴見俊輔 重松清)

 

鶴見 私が祖父(後藤新平)を抜いたと言えるものが一つだけあるんです。それは勲章をもらわないこと。祖父は勲章をもらうのが好きでね。どんどんもらっちゃうんだよ。(笑)

重松 いまはおカネやモノを増やすことに価値を見いだす時代だけれども、「これだけは増やさない」というものも何か一つ持ったほうがいいかもしれませんね。

鶴見 そう、それそれ。だから私は勲章をもらわないんだよ。(笑)

重松 うちの親父たちの世代だったら、子供に何を買い与えることが親の甲斐性だったわけですよ。いまの時代は、たとえば「子供にはケータイは持たせない」とか、「ゲームの時間を限る」とか、何か減らす方向のものを親の哲学として持っておかないとだめかもしれない。

鶴見 漢文にあるでしょう、「為す有るものは必ず為さざる有り」、それなんだよ。「為す有る」というのは、だいたい世間を主として、世間の評価に合わせるわけだから。だからさっき言われたように、家庭がめざすべき里程標は何か。それが問題なんです。

重松 それは、僕はやっぱり基本的には子供の健やかな成長なんだと思うんです。

鶴見 そう。私は母親に対して一つだけ恩返ししていると思うんだ。それは、自殺に失敗したこと。(笑)

重松 そこですよ。生きるということだけで実はすごいことだと思うんですよ。成績が上がったとか、受験に受かったとかいうことよりも、「元気でよかったね」と。そこが原点だと思うんです。

鶴見 どんな子供でも家のなかでは世界一の有名人なんです。家のなかで無名な子供なんていない。そのかけがえのない財産を大切にすることに尽きるんじゃないかな。それが、家庭・家族の持つ最大の意味だと思うね。「自殺しない」ということが最高の親孝行なんです。