2度目の「蜷川実花になるまで」

p.85

の時できて私が打ち出したいイメージを写真集の表紙にしています。有名にしたい写真、”蜷川=あの写真”と思って欲しい写真は、計画に出しています。自分のイメージをある程度操作するんです。

ただ、撮っている時は戦略的なことは一切考えません。撮っている瞬間は純粋に撮りたいから撮っているだけです。

撮影時は、どこまで不純物を排除し、イノセントになれるか。どれだけピュアな気持ちでシャッターが切れるか。その一点が本当に大切になってきます、逆に、発表時にどこまで第三者的な視点をもてるかといった、両極のバランスをとることが、私の創作活動においてのキモになります。その距離は離れていればいるほどいいんです。中間は入りません。結構、徹底してそうするようにしています。

 

p.106

私の下でアシスタントの経験を積んだから絶対にプロのカメラマンになれるという保証はどこにもありません。アシスタントとしての技術は教えられても、個性は絶対に教えられるものではないですから。アシスタントして有能だからといって、プロになれるわけでもない。私のところからは、アシスタントしての仕事を最後までクリアして、独立した人はまだひとりしかいません。彼女はいま、プロのフォトグラファーをして仕事をしていますが、そこは本当に難しいですね、たとえ、フォトグラファーになれなくても、人としてきちんとした人には育てあげたいと思っています。その後になんの仕事に就いても大丈夫なように、常識ある人間になって卒業してもらえればと。